中国伝統医学について

現代医学は各専門分野が高度に専門化、独立化したため人間の健康を統合的に評価することが困難となっています。その結果、疾病の予防、治療を全人的に行うことができなくなってきています。世界3大医学の一つである中国伝統医学は中国を中心に東アジアで生まれた自然観、生命観に基づいている。この自然哲学は人間と自然を貫く法則として広く東アジアの基本思想を形成している。中国伝統医学では心身内外の病気の原因により心身システムのネットワークが破綻する。その結果として病気が発症する。

この心身システムネットワークのあり様は東洋の自然哲学をその基礎理論としており、有効な治療には心身システム破綻の在り様の正確な診断が必要である。中国伝統医学は五臓(肺、心、肝、脾、腎)の各システムを調和させるシステム医学であり、心身一如の心療医学であり、自然環境に適応する気象医学であり、病態の変化に応じる時間医学です。 

伝統医学の治療は正確な診断に基づいて各システムの異常に対応する複数の薬物を組み合わせて処方を作成する。それにより心身システムネットワークの破綻を修復する。その結果として病気が治る。このように、東洋の伝統医学は病気を診るのではなくその人間の心身システム全体を対象とする。
また、中国伝統医学では疾患の成り立ちを正気の減少(虚)「生体の恒常性維持能力の低下」を基礎として病気の原因(邪)が生体を侵犯した場合に病気が引き起こされる。
従って疾患を治療する場合 病変を除去(祛邪)するとともに正気の虚を快復させる(扶正)必要があります。また、中国伝統医学では加齢とともに正気が減少するとされています。

中国伝統医学では病変に対する作用とともに正気の減少による人体の臓腑、器官の低下した機能の強化が治療目標となります。更に重要な事は、中国伝統医学では心身を分離しておらず心と身体は一体であり不可分であるとして治療がおこなわれ漢方薬は患者のQOL(生活の質)を心身ともに高める作用を持っています。特に高齢者では多臓器の機能低下が疾病の基礎にあり、心身ともに正気が減少しているため特に中国伝統医学による治療が必要です。正気の虚を快復させる(扶正)治療は抗老化治療そのものであり、各種疾患の基礎治療となります。また、このように、中国伝統医学の疾患概念は西洋医学の疾患概念と異なり、時間軸を含む多次元から認識される重層的な統合病態です。例えば、加齢に伴って更年期には生理的に内分泌器官の機能低下に伴い交感神経の機能異常をきたしやすく、その結果高血圧が発症しやすい。この加齢による生理的変化を東洋医学では予防及び治療可能であり、結果、血圧上昇のリスクを制御できます。このように中国伝統医学では加齢による生理的変化を最小限にとどめる抗加齢治療が可能です。当院では東西医学融合による加齢の制御、及び膠原病、神経疾患,アルツハイマー病、てんかん、緑内障などの難治性疾患の新たな治療法の開発を行っています。